朝、宿に迎えに来たのは、マリオスという名のガイドさん。
今日、私たちをナミブ砂漠に連れて行ってくれる。
荷物をまとめてレセプションに預けると、
マリオスと一緒にみんなで四駆車に乗り込んだ。
もうひとつ別の宿に他のツアー参加者を迎えに行き、
スペイン人女性2人を乗せ、マリオスを含め合計6人で出発した。
町の南に向かって走り、大西洋に流れ出るスワコプ川を渡る。
川といっても乾いていて、水はなかった。
スワコプムントの町を外れると、砂漠に出る。
あっという間に、一面砂漠の景色になった。
砂漠を車で走るとけっこう揺れる。
小高い丘の上で車を停めた。
あいにくの天気で、せっかくの砂漠もくすんで見えた。
それでもさらさらとした砂が広がるその景色に興奮し、
車を降りるとさっそく記念撮影をした。
そんな私たちに、ガイドのマリオスはナミブ砂漠の地図を出して、
ナミブ砂漠についていろいろと説明してくれた。
ナミブ砂漠は、ナミビアの西側大西洋沿いに、
北はアンゴラとの国境付近から南は南アフリカの北端まで
全長1,288kmにわたる砂漠だ。
その広さは5万㎢にもおよぶ。
マリオスの地図には、スワコプムント辺りの細長い砂丘地帯(Dune Belt)と、
南のナミブ=ナウクルフト国立公園として国立公園に指定されている
大きな砂漠地帯とに別れて表記されていた。
砂漠と砂丘とはどう違うのか。
砂丘とは、風で運ばれた砂が堆積してできた小さな丘のことを言う。
スワコプムント周辺のこの地帯は砂丘であり、ナミブ=ナウクルフト国立公園の
砂が飛んできてできた砂の丘なのだ。
砂漠の上にできた砂丘である。
ナミブ=ナウクルフト国立公園南部にあるソススフレイ付近のアプリコット色の
砂漠からも砂は飛んできていて、
この付近の砂漠にも赤く見える地域があるそう。
ちなみにアプリコット色の砂漠は、砂に含まれる鉄分が
酸化することによって作られるらしい。
また車を出発させると、マリオスは周囲を
何か探しているような目で見渡した。
そしてどうやら何かをみつけたらしく車を停めると、
砂丘に上り砂を掘り出した。
そして、何かを捕まえて戻って来た。
手のひらに乗せられていたのは、白い小さな虫。
マリオスは、勘が鋭い。
私たちからすれば何もないように見える場所だけど、
マオリオスが砂を掘り起こすと出てくるのである。
全身が半透明で大きな目がかわいいミズカキヤモリ。
ナミブ砂漠カブトムシはどこにでもいて、
マリオスは、運転しながら次々に採取して行った。
マリオスは、何度も車を停めては小さな虫を掘り起こしたり、
何千年も前の枯れ草を見せてくれたりした。
ちなみに、ナミブ砂漠は約8,000年前にできた世界最古の砂漠だ。
当たり前だけど、砂漠化される前は緑のある土地だった。
では、なぜ砂漠化したのかと言うと、砂漠のでき方というのは4つあって、
それぞれ土地柄や気象条件など理由があるのだが、
要は雨が降らず乾燥することによって砂漠化するのである。
それから、ミロタムヌス・フラベリフォリアという植物が
生えた地域に車を停め、みんなで降りた。
マリオス曰く、ミロタムヌス・フラベリフォリアの間に
カメレオンがいることが多いらしいので、探しながら歩いた。
しかし、なかなかみつからない。
ここにはいないと言うことで諦めて車に戻ると、
マリオスはミロタムヌス・フラベリフォリアの枯れた葉を拾い、
それにペットボトルの水を浸した。
すると、一瞬にして葉が開き水々しいものになった。
ミロタムヌス・フラベリフォリアは、「復活の木」とも呼ばれている。
少しの雨量で緑がもどり、過酷な環境の中でも生き抜く強い生命力を持った、
砂漠ならではの植物だ。
また別のカメレオンがいそうな場所に行った。
ミロタムヌス・フラベリフォリアの間をのぞきながら歩く。
みつけたのはやっぱり、マリオスだった。
みんなでマリオスの指差す方向を見ると、いた。
ミロタムヌス・フラベリフォリアの色になったカメレオン。
ナマクアカメレオンだ。砂漠にいる珍しいカメレオンである。
目がすごい角度でギョロギョロと動く。
マリオスは捕まえておいたナミブ砂漠カブトムシを取り出し、
カメレオンの前に見せた。
するとカメレオンは、じっとそのナミブ砂漠カブトムシをみつめた。
そして次の瞬間、パクッと口を開けると細長い舌を出して、
カブトムシを捕らえた。
バリバリ、ムシャムシャとカブトムシを食べるカメレオン。
なんとも気持ち悪い。
マリオス今度は、ヘビをみつけたらしかった。
ヘビを捕まえる道具を車から取り出し、植物の間にいるヘビを捕まえた。
ナマクアヒメアダーというヘビ。
世界最小の毒蛇らしく、近づくなと言われた。
砂に放つと身体をくねくねと動かし、横にスライドするように移動した。
そして、砂の中に埋もれていった。
そんなこんなしているうちに、空にかかっていた分厚い雲が消え、
太陽が顔を出した。
陽の光が当った砂漠はだいぶ印象が変わった。
赤い砂の部分がとてもきれいに見えた。
ソススフレイは諦めたけど、
なかなかきれいな砂漠を見ることができて、満足だ。
また車を走らせると、マリオスが今度はいきなり帽子を窓から投げた。
よく見ると、何か走っていたものが帽子の影に気付き、その動きを止めた。
生き物は帽子を鳥と間違ったらしく、
鳥からの捕食を免れようとして動きを止めたらしい。
マリオスは砂をかき、小さな生物をみつけてきた。
アンチエタヒラタカナヘビだ。
みんなにその姿を見せた後、
マリオスはアンチエタヒラタカナヘビを砂の上に放った。
すると、手足を交互に上げ下げしながら歩き、砂の中に埋もれていった。
こんな不毛な地にも生息する生物はいるのである。
動物がたくさんいる国立公園でゲームドライブをするかのように楽しかった。
砂が黒く見える部分には磁気があり、砂鉄を寄せ付けているらしい。
マリオスは磁石を取り出し、くっつけて見せてくれた。
それからまた車に乗ると、勢いよく発進させた。
砂丘の凹凸を乗り越えるのは、なかなかドライビングテクニックが要るようだ。
ペーパードライバーの私はもちろん、日本で普通に運転しているだけの人なら、
ここを走るのは難しいかもしれない。
あまりに大きな凹凸があるところは、
マリオスが車から出て砂を掘り起こして乗り越えた。
ものすごい角度で走る。
まるでジェットコースターみたいだった。
私たちがあまりに悲鳴をあげるものだから、マリオスは言った。
「心配するな。これは日本車だ」。
さすが、ランクルである。横転しそうでしない。
またカメレオンをみつけると、カブトムシを食べさせて観察。
砂の上にいるカメレオンは身体を黄色くさせていたが、
カブトムシを食べると、黒くなった。
そして、その辺りでは最も小高い丘の1つで車を停めた。
そこからは、遠くまで一面の砂漠が広がっているのが見えた。
大西洋もちらっと見え、その上には濃霧がかかっていて不思議な光景だった。
さらにその上の砂丘の上を登ってみた。
砂に足を取られて全然進まないし、靴の中にたくさんの砂が入った。
じれったかったが、それでもなんだか楽しく感じている自分に
子ども心が残っていることを感じる。
子どもだったら、全身砂まみれになって遊びたいくらいだ。
砂丘の頂上から見る景色は格別だった。
砂丘の中には、新雪のように踏むときゅっきゅっと鳴る部分がある。
マリオスがみんなを呼び、砂の上を上った。
そして、一斉に滑り降りると、すごい音できゅっきゅっと鳴った。
ナミブ砂漠を堪能し、最後は大西洋が見渡せる場所に行った。
スワコプムントより北、アンゴラの手前にかけて、
スケルトンコースト(骸骨海岸)と呼ばれる場所がある。
濃霧のため難破した船舶や鯨などが打ち上げられたのがその名の由来だ。
私が見たのは、広い広いナミブ砂漠のほんの一部。
ナミブ砂漠にはいろんな表情がある。
地球の表面積のうち、79%が海。
陸は29%。
そのうち砂漠が占める割合は、約4分の1。
普段日本での生活であまり感じることのない自然の方が大きく、
文明と共に生きる私たちの生活の方がよっぽど小っぽけなのである。
同じ地球上に生きている生物として、地球全体のことも考えることも、
私たちには必要なことなのだと思う。
日本社会の発展を考えることはもちろん大事ではあるけど、
自然ほどもっと根本的に大事なものはないのである。
スワコプムントの町に戻ると、次の町の移動のため
コンビが停車するガソリンスタンドに向かった。
「Close-up Africa Safaris」
8時半〜14時。650N$。
電話:264-64-404207
ホテル「Villa Wiese」でもお願いすることができる。