Wi-Fiが使えない。
シャワーがお湯じゃない。
電化製品の充電ができないかもしれない。
シャワーの水すら出ないかもしれない。
ベッドが汚いかもしれない。
始めの2つは確実。
後は行ってみないとわからない。
アルバミンチからコンソに向かうミニバスの中で、
何となく不安になっている自分に気付いた。
バカらしい。
アフリカの民族を見に行くというのに、何を期待しているのだろう。
ベッドさえきれいだったらいいじゃない。
それでも、ベッドだけはきれいであってほしかった。
緑豊かな田舎の1本道。
いくつか小さな集落を過ぎ、
マーケットが開かれている場所もみつけた。
よく揺れる車内でウトウトとしていると
2時間半はあっという間に過ぎた。
バスは、コンソの町の中心にある広場で停車。
周りにいる人に聞きながらお目当ての宿に向かった。
宿のベッドはなかなかきれいだった。
少しホッとした。
コンセントは壊れているようだったが、仕方ない。
さっそく、マーケットに出かけた。
コンソの町では週に2回、月曜日と木曜日にマーケットが開催される。
そのマーケットは、周りのコンソ族の村からコンソ族が集まって
開かれるものだ。
宿の男の子・アマヌエルが案内してくれると言うのでついて来てもらった。
彼は宿の前の小さな道を通ってマーケットまで連れて行ってくれた。
マーケットの規模はかなり大きく、
大勢のコンソ族でにぎわっている。
コンソ族の女性は、腰のあたりにフレアのついた
2段のスカートを履いているのが特徴だ。
それに、頭にはスカーフを巻いている。
アマヌエルに宿に戻らなくて大丈夫かと聞いたら気にしないでと言うので、
そのままついて来てもらった。
やっぱり1人でいるより心強い。
マーケットでは、衣類、雑貨、野菜、穀物、家畜など、
ありとあらゆるものが売られていて、どこも活気があった。
店の前で商品の品定めをする人々、
朝の袋いっぱいに買った物を詰めて運んでいる女性、
サトウキビをほおばりながら歩く子どもたち。
私は市場が好きだ。
生命力で満ちあふれる空気感に浸ると、
余計な悩みは持たないでおこうという気持ちになる。
1通り見て回ると、町の中心の方に向かって歩いた。
アマヌエルが「ごはんを食べていないんだったら、そこの店が美味しいよ」と
言うので一緒に行った。
町の中心にある「KONSO EDGED HOTEL」のレストラン。
生ビールで乾杯。
後から知ったのだが、アマヌエルはまだ18歳だった。
この国ではお酒に年齢制限がないので問題はない。
宿に戻ると、アマヌエルはお母さんに怒られてしまった。
家のこともしないでどこほっつき歩いてんだいって感じだろう。
アマヌエルには申し訳なかったけど、私としてはとても助かった。
宿に戻ると鉄製のタライを借りて、着ていたものを全部洗濯した。
コンソはだいぶ暖かいので、ちゃんと洗濯物も乾きそうだ。
久しぶりに半袖になった。
しばらく休むと、また出かけてみることにした。
今度は宿の前の通りから中心に行って、
バスターミナルの手前を曲がってマーケットに向かった。
マーケット内を1人でじっくりと見て回る。
好意的な目をしてくれる人と、敵視している人がいるのは肌で感じた。
しばらくすると、おばさんが近づいてきて、おばさんが頭に巻いていた
ピンク色のスカーフを取り外し、私の頭に巻いてくれた。
周りにいたみんなに囲まれた。
みんなコンソ族みたいだって笑っている感じ。
コンソ族がとても身近に感じることができ、とても楽しい気分になった。
その後歩いていても、あいさつしたらみんな返してくれるし、
何人も握手した。
すれ違う女性が、急に木の棒を頭に当てて遠くを見ながら、
雄叫びを上げるように声を出したときは驚いたけど、
アフリカらしくてそれもまた楽しかった。
ずっとずっとマーケットにいたいくらいテンションが上がった。
しかし……。
しばらくして宿に戻るときのこと。
前からやって来た女性に敵意むき出しで、いきなり腹をなぐられたのだ。
あまりに衝撃的すぎて、しばらく呆然としてしまった。
なぜ……? 全く理解できなかった。
私は彼女に何もしていない。
カメラを向けるどころか、カメラはバッグの中にしまってあったし。
ただ、こちらに近づいて来ていたので、物乞いかな……だったら、
お金をあげようかなと、彼女の目を見ていたかもしれない。
何が気に入らなかったのか。
しばらく落ち込んだけど、コーヒーを飲んで宿でゆっくりすると、
忘れることができた。
ちなみに、この町には外国人旅行者は全然いない。
通過して行く旅行者も1人で旅している人は皆無だ。
やっぱりガイドを付けた方がいいのだろうか。
この先、ツアーに出るときはガイドを付けることになるし、
ここはとりあえず1人で乗り切ろう。
夕方ようやく晴れてきたので、出かけてみた。
宿の横の店でセレモニースタイルのコーヒーを飲む。
道路にはハイエースが停まっていて、まるで人が荷物のように
後ろのスペースいっぱいに詰め込まれて出発した。
町の中心まで行くと、水を買って帰った。
部屋のシャワールームのシャワーは、蛇口が外れそうなくらい回すと、
水が出た。
部屋の明かりは薄暗く、電圧が安定しないので時々真っ暗になる。
何もすることがないので早く眠ることにした。
翌朝、夜の冷え込みのせいか軽く風邪をひいてしまった。
体力の消耗のせいでまだいくらでも眠れそうだったが、
今日はジンカに行く日。
10時頃、宿を出ると、昨日行ったレストランで朝食にした。
レストランの前でジンカ行きのミニバスを待った方が待たずに乗れるよ、
とアドバイスをくれた人がいたが、ターミナルに行くことにした。
確かに。
乗客が集まるまで2時間半待たされた。
そして、また次なる新しい民族との出会いを求めて、ジンカに向かった。
【住所】バスターミナル出て左手まっすぐ下る
【料金】100ETB(シングル・シャワー付)
【設備】コンセントなし
【評価】★★★★☆
ミニバスで2時間半。130km。35ETB。