「バンブースーダーニー」
とマイケルが歌うと、ドライバーを始めみんなでバンブーと掛け声をかける。
ハルツームのバスターミナルに到着すると、
マイケルと4人でタクシーに乗り込んだ。
バンブースーダーニーは、スーダンでポピュラーな歌らしく、
ドライバーも機嫌がいい。
宿まで後一歩というところでガソリンが切れて、ドライバーが買いに行った。
それから、ようやく宿に到着したはいいけど、
ちょうどラマダン後の旅行シーズンらしく、お目当ての宿がいっぱいだった。
ラマダンとは、ヒジュラ暦の第9月のこと。
この月の日の出から日没まで、イスラム教徒は断食を行う。
苦行であるラマダン開けは、
ちょっとしたお祭りモードになる傾向にあるのだ。
マイケルもお目当ての宿がいっぱいだったみたいだけど、
どうにか別のホテルを探し出しだした。
マイケルには、お世話になりまくりだった。
ありがたい。
私たちも、近くにあるホテルを何軒か当たって、
3人で1つの部屋をシェアすることになった。
ずっと待たされて、ようやく部屋に入ったのは20時半頃。
昨日の部屋を思うと天国のようだ。
冷気の出るエアコン、クリーンなバスルーム、しっかりした作りのベッド。
横になると寝ちゃいそうだったので、そのまま晩御飯を食べに出かけた。
宿の近くには食堂の集まるエリアがある。
周辺、街灯はあるけど、それほど明るくもなく、
黒人の顔ははっきり見えない。
宿の近くに食堂の集まるエリアがあって、
どの店もバーベキューの煙がモクモクと出ている。
女性の姿はほとんどない。
トーブ(白いワンピース)を着てイスラム帽を被った男の人ばかりだ。
何軒か見て回って緑色の店に入って晩ご飯にした。
翌朝起きると、ユキちゃんとリョウヘイ君はもう出かけてしまったらしかった。
2人はここでエチオピア・ビザも取らなくてはいけない。
早めに動き出したようだ。
2人が部屋を出た頃、私も起きた。
今日は、外国人登録をしなくてはいけない。
したくすると、とりあえず朝食に出かけた。
食事のできそうな店に入ってみるが、どこの食堂でも後2時間待てと言われた。
9時前、まだ街の店は営業時間じゃないらしい。
仕方ないので、道端に店を出すシャイ屋でミントのシャイを飲んだ。
スーダンには、街中いたるところに道端でシャイを売るおばさんがいる。
シャイを飲んでいると、ユキちゃんとリョウヘイ君が通りかかり、
外国人登録にはホテルが出してくれるレターが必要だと教えてくれた。
ホテルに戻りレターを出してもらった。
両替も必要だったので、それも相談した。
とりあえず、50$分だけしたかったのでそれを言うと、
ドルのお釣りがないと言われた。
仕方ないので、どこかに両替ができる場所がないか探した。
ホテルの近くに両替所があった。
中に入ってレートを聞くと、1$=5.9SDGだと言う。
どうやら公式レートらしい。
スーダンも国の出す公式レートと、闇レートが存在する。
ちゃんとした店構えの両替所で両替したら、
公式レートが適用されるかもと思っていたけど、やっぱりそうだった。
仕方なく街中を、両替商探して歩いた。
何か困ったことはないかと聞いてきたおじさんに、
いいレートで両替できる場所はないかと聞くと、知り合いに聞き回ってくれた。
さっき行った両替所の隣の両替所に連れて行かれた。
そこでもドルのお釣りがないらしく、
今度はさっき入った両替所に連れて行かれた。
なぜかそこで、闇レートで両替ができて、尚且つドルのお釣りも貰えた。
なんなんだか。
スーダン・ポンドができると、ホテルのスタッフに書いてもらった
外国人登録の場所のアラビア語のメモを人に見せながら、バス停に向かった。
歩き始めてから気付く。
スマホにマップを読み込んでいない。
つまり、GPSが使えない。
人のブログから情報を集めたりとか、
どうも現代の旅の感覚を忘れてしまいがち。
せっかく便利な世の中になったんだから、
情報を集めて少しでもリスクを避けたいところだ。
とはいえ、そういう情報のないままコミュニケーションのみで
旅をするのもワクワクするんだけど。
メモしか頼りがないまま、人に道を尋ねて、
どうにか近距離バスターミナルにたどり着いた。
人も店もバスもごちゃごちゃしたバスターミナル。
お腹が空いていたので、お店に入ってシュワリマ(ケバブサンド)を食べた。
それから、メモを頼りにミニバスに乗り込んだ。
隣の席の女性も外国人登録に向かうようだった。
彼女はシリア人でスーダン人と結婚しているそうだ。
彼女と一緒にとある施設の前で降りると、中に入った。
青い建物が奥にあって、その横の建屋の前に
書類を扱うおじさんがテーブルを並べている。
同じバスに乗っていた男が案内をしだした。
手の空いているおじさんに、パスポートとレターを渡した。
他にも必要なものがあるらしい。
(必要なもの)
⚫︎パスポート
⚫︎パスポートとビザのコピー
⚫︎顔写真
⚫︎ホテルに出してもらうレター
⚫︎申請書
⚫︎申請費用
書類を扱うおじさんの後ろに、
コピー機と写真のサービスをする店が軒を連ねていて、
そこで足りないものを調達した。
(コピー2枚と写真7枚で15SDG)。
全部で550SDGかかると言われて、持ち合わせがなかったので、
両替してくれるおじさんを紹介してもらった。
案内してくれた男は、申請書を勝手に書いた。
周りにいる人のパスポートを見ると、シリア人が多いようだった。
必要なものが揃うと、男はラクシャ(トゥクトゥク)の値段交渉を始めた。
10SDGだから、と言ってその男も一緒に乗った。
ここでこの男に、何でついて来るんだと聞いておけばよかったのだ。
イスラム圏では、すごく親切に案内してくれる人ばかりなので、
何も疑わなかった。
10分ほど走ったところで、別の施設にたどり着いた。
役所のような施設の中は、申請書を持った人で溢れている。
男は、私のパスポートを持っていろんな知り合いに挨拶しながら、
長蛇の列には並ばず、スイスイと手続きを済ませてくれた。
いくつもの窓口を回り、いくつものサインやハンコをもらう。
切手(5SDG)を買い、申請費用(370SDG)を支払った。
最後は、ビザの横に外国人登録の証明になるシールを貼ってくれた。
これで、外国人登録が完了したようだ。
施設を出ると、男に100SDG請求された。
最初に必要だと言われた額は、この男への報酬も含まれていたらしい。
その額はこの国では、少額ではない。
しかし、私への労働の対価を支払わないわけにはいかない。
ただ、ちゃんと最初に説明すべきだとも思う。
トラブルになるやり方だし、いい気分ではない。
男に報酬を支払うとそこで男と別れた。
他の国にも外国人登録というシステムはあるが、
こんなにややこしいシステムは始めてだ。
しかし、この施設に働く人はたくさんいる。
このシステムによって、少しでも雇用を生むことは確かだし、
貧困なスーダン政府にお金が入ることも確かだ。
ちゃんと正しい方向性で税金が使われることを祈りながら、
施設を後にした。
施設前の大通りからバスに乗ると、中心地に向かった。
一緒に乗り合わせたおじさんに案内してもらって、ホテルに戻った。
体調が悪かった。
スーダンの水や食べ物は私には刺激が強すぎた。
ベッドに横になっていると、2人が帰って来た。
エチオピア・ビザの取得もまた大変だったようだ。
5か月前から、ビザ代が値上がりしたそうだ。
在カイロエチオピア大使館で言われたビザ代と同じらしい。
外国人登録は空港でもできるらしく、2人はそっちに登録に向かった。
少し昼寝した後、重い身体を起こし、
せっかくなのでもっとハルツームの街を歩こうと、出かけた。
外は目眩がしそうなくらい暑かった。
今度はGPSを頼りにナイル川方面に向かって歩く。
大通りに出ると、食堂で遅い昼ごはんを食べた。
ソーセージの炒め物が入ったバーガーとオレンジジュース。
店を出ると、英語ができそうなおじさんに、
ホワイトナイル・ブリッジに行くバスの乗り方を聞いた。
「この時間(16時半)はラッシュだから、バスに乗るのは難しい。
明日の早朝か、後2時間後に来るといい」。
こういう地元の人の意見は聞くものだと思っているので、
いったん帰ることにした。
おじさんの経営する会社で、行き先をアラビア語を書いてもらい、
冷たいコーラももらった。
宿に戻ると、2人も帰っていた。
空港での外国人登録は、街中の施設と比べて、
それほど大変でもなかったらしく、
2人も無事に外国人登録を済ませたらしかった。
ちょっと疲れているし、明日の出発を延ばすことにした。
翌朝、8時前頃に起きるとしたくした。
2人もホワイトナイル・ブリッジに行くというので、一緒に出かけた。
今日もまた宿の近くで、シャイを飲む。
横に座っていた男は、ハルーンと言う名前のヨルダン人。
ユダヤ人でムスリム、だけどムスリムの格好はしていなかった。
スーダンにいる外国人のほとんどが近隣のイスラム国からの人々で、
以前はいたのであろう中国人は全く見かけなかった。
南北が別れてから、中国企業は撤退したのかもしれない。
他の国では、中国人に間違えられ中国人をバカにした言葉を掛けられるのに対し、
この国では好意的に「你好」と声を掛けられる。
昨日のおじさんに書いてもらったアラビア語のメモを見せながら、
バスターミナルに向かった。
着いた先は昨日のバスターミナルだった。
ミニバスに乗り込むと、10分ほどで白ナイル沿いの橋に到着。
遠くに見えた高層ビルがその近くにあった。
写真を撮っていたら、足下に動物の足が1本転がっていた。
地図を見ると、どうやらホワイトナイル・ブリッジの南にある
ニュー・ブリッジにいるらしかった。
北を見るとホワイトナイル・ブリッジが見えた。
その先で、エチオピアのタナ湖からくる青ナイルと
ウガンダからくる白ナイルが合流し、エジプトへと流れていく。
川は茶色く濁っていたけど、川岸には泳いでいる人もいた。
木製のボートを漕いでいる人もいる。
川の上には、ツバメや白鷺が飛び交った。
橋を渡ると、またミニバスに乗って中心地に戻った。
小さいスークを通り、宿に向かった。
食堂に入ると、ターメイヤ・サンドとフールを食べた。
フールはスーダンの庶民の食べもので、
豆を煮たものにオイルがかかっている。
この店では、それに野菜が混ざっていて粉チーズがかかっていた。
それをアエーシに付けて食べる。
なかなか悪くない。
午前中で活動を終了させた。
雑用を済ませると、ゆっくりする。
対して活動もしないのに、ものすごく体力が消耗する。
疲れをためないようにしないといけない。
明日は早朝からカッサラへ移動だ。
【住所】PO Box No 44478, Postal Code11114, Khartoum
【料金】300SDG(トリプルルーム、トイレ・シャワー・エアコン付)
【設備】Wi-fi
【評価】★★★☆☆
バスで12時間半。940km。アスワン〜ハルツーム通しチケット370E£。