朝起きるとテラスに出て、テーブル・マウンテンを眺めた。
テーブル・マウンテンの上には、テーブル・クロスがかかっていた。
天気予報では晴れの予報だったけど、曇り空。
少し肌寒い。
宿を出ると中央郵便局に寄って、友だちに書いたハガキを投函した。
それから、鉄道駅に向かう。
今日は、アフリカ大陸縦断の最終目的地である喜望峰に行くのだ。
ケープタウン駅に着くと、往復切符を買って、
サイモンズタウン行きの列車が停車するホームに行った。
最後尾の車両が一等車になっていたのでそこに乗り込む。
列車が出発すると、しばらくはきれいにテーブル・マウンテンが見えた。
列車は各駅停車で、ゆっくりゆっくりケープ半島に向かって南に進んだ。
しばらくすると、きれいな海が見えてきた。
大西洋だ。
ビーチリゾートになっているようだった。
1時間ほどで到着したフィッシュフックという駅で、
乗り換えが必要とのことだった。
駅を出て、バスに乗り換える。
海沿いに、鉄道の線路があって、サイモンズタウンまで繋がっている
ようではあったけど、改修工事中なのかもしれない。
サイモンズタウンの駅でバスを降りると、
その先に観光案内所が見えたのでそこに向かった。
観光案内所の前にはワゴン車が並んでいて、その客引きが近づいてきた。
「ケープポイントに行くなら、この車をチャーターして行くしか
方法はないんだよ。1人300Rだ」とのこと。
喜望峰とケープポイントに行って、2時間で帰って来るというプランで
1人300Rと話がつき、車に乗り込んだ。
サイモンズタウンを出発すると、ケープ半島の南に向かう。
道路にはペンギン注意の看板。
ケープペンギンが見られる場所があるのだと運転手は言う。
ベンゲラ海流が影響を与えるナミビア南部から
南アフリカ沿岸部に生息するケープペンギン。
これまで私はオーストラリア、南米と何度もペンギンが見える場所を
通っていながら、ペンギンを見逃してきた。
ここでやっと野生のペンギンを見ることができるのか。
しばらくすると、喜望峰自然保護区に入った(入場料110R)。
喜望峰自然保護区は、西はシュスター湾から東はスミッツウィンケル湾まで
伸びた40kmの海岸線沿いのエリア。
豊かで多様な植物が77.5km2にわたって広がっている。
まず目指すのは、喜望峰。
ここが今回アフリカ大陸縦断の最終目的地である。
喜望峰は、アフリカ最南端の場所と勘違いされることが多いが、
実は喜望峰より東に200km離れたアガラス岬がアフリカ最南端。
なぜ、ここをゴールにしたかというと、特に理由はない。
最南端ではないことは知っていたけど、ここにしてしまった。
比較的アクセスしやすい有名な観光地だから。
喜望峰自然保護区をしばらく走ると、ダチョウに出くわした。
ダチョウは、私たちの車の前に現れ、車のすぐ側までやって来た。
大きな目がかわいいダチョウ。
喜望峰自然保護区の近くには、ダチョウ園がある。
そしてたどり着いたのは、観光客の集まる場所。
「CAPE OF GOOD HOPE」の看板がある。
そこは喜望峰。
アフリカ最南西端の場所だ。
ついに、ゴールの地にたどり着いた……と感慨に浸りたかったものの、
寒すぎて記念撮影をするのが精一杯だった。
すぐに車に戻ると、次に向かうはケープ・ポイント。
ケープ・ポイントは喜望峰から1kmほど南にある。
運転手に「全部で2時間しか時間がないんだから、急いでね」と
何度も念を押された。
ケープ・ポイントの上にある灯台までは、
ケーブルカーで行くことにした(50R)。
ケーブルカーの終点に到着すると、ケープ半島がきれいに見えた。
その上にある灯台に向かって歩く。
この灯台、よく霧で隠れてしまうため、今では使われていない。
灯台のある丘からは、さらにその先南にあるケープ・ポイントが見える。
ケープ・ポイントは、ケープ半島の最南端。
ちなみに、インド洋と大西洋の境もここではなく、アガラス岬である。
アガラス岬の方を眺めたり、地図を想像しその場所にいる自分を感じた。
灯台の横には、世界各地までの距離が書かれたポールが立っている。
行ったことのある場所がたくさん載っていた。
が、日本はなかった。
ケープ・ポイントを眺めていると、本当にアフリカ大陸縦断の旅が
終わったのだな、と実感が湧いてきた。
4大陸すべて陸路で旅できたこと。
何にもならないことだけど、とにかくものすごい自己満足である。
他人には理解してもらえないかもしれないけど、
やってやった気分はものすごく気持ちいい。
いつか絶対南極にも行こう、と思った。
それくらいのお金を使える人間になろう。
灯台を後にすると、ケーブルカーで駐車場に戻った。
時計を見るとどうやらケープポイントで、
かなりの時間を費やしてしまったらしかった。
追加料金を2人で100R徴収されることになった。
がめつい運転手は、車に乗ったときから
とにかく何かといろんな料金を請求しようとしてくる。
最初は喜望峰は別料金とも言われた。
ペンギンの見える場所まで行きたいなら、50Rと言われた。
それでも、やっぱり見たかったので、お金を出して行ってもらうことにした。
途中、ヒヒをたくさん見た。
喜望峰自然保護区内にはヒヒが生息している。
到着したのは、ボルダーズ・ビーチの横の駐車場。
「もう君たちには時間を使いすぎている。
とにかく写真撮影だけにしてくれよ」。
追加料金も払っているというのに本当にがめつく、ムカつく運転手だった。
車を降りて運転手について近くの花壇の前に行くと、その中をのぞき込んだ。
すると、いた。
ケープペンギン。
南部アフリカにのみに生息するという体長約60cmのケープペンギン。
アフリカンペンギン、ジャッカスペンギンなどの別名を持つ。
眠そうな顔のケープペンギンは、不細工だった。
駐車場からも、何羽かのケープペンギンをみつけた。
ずっと見逃していた野生のペンギンを見ることができて満足。
サイモンズタウンの駅まで戻ると車を降りた。
フィッシュフックに向かうバスが待っていたので乗り込み、客が集まると発車。
帰りの列車は爆睡した。
ケープタウンの町に戻ると、最後に飲むワインを買いに行った。
宿に戻り、テラスに出ると、空が夕陽に照らされてピンク色になっていた。
ライオン・ヘッドの美しい影を眺めながら、最後の乾杯。
この10年どこかにずっと旅が心の中にあった。
今はもう本当にスッキリしている。
日本を離れた期間の分、またいろいろ大変な思いもするだろうけど、
その大変な思いを差し引いても私には、ものすごくプラスになることだった。
旅をしなかった人生は考えられない。
こんな気持ちを味わえる自分は本当に幸せ者である。
足掛け12年の世界旅行は、いつか南極行く日までひとまず、休止。
日本に帰ったら心残すことなく、次の人生のステージをがんばろう。
さて、日本帰国だ。
1. ケープタウン→フィッシュホーク。列車で1時間半。16R。
2. フィッシュホーク→サイモンズタウン。バスで20分。列車の料金に含まれる。
3. サイモンズタウン→喜望峰。タクシーチャーターで30分。3時間+ペンギン見学で375R。
(2時間で納めるなら1人300R、国立公園入場料はそこに含めてもらう交渉をした。始めにペンギンも見たいと言って交渉すれば、追加料金は取られないかもしれない。1人で行く場合は割高に請求される可能性あり)。