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【アフリカ大陸縦断019】オモ・バレーのツーリングとムルシ族の村訪問(@ジンカ/エチオピア)

まずは火曜マーケットへ

ハイエースの後ろの扉を開けると、ヤギが転がり落ちた。
シートの後ろの小さな荷台にヤギが入っていたらしい。
どうりで車内でヤギの鳴き声が聞こえると思った。

ジンカのバスターミナルに着くと、お目当ての宿に向かう。
ホテルのベッドはきれいだった。
コンセントもあって充電もできた。
ただこの後3時間後には停電し、
その後4日間はずっと電気が通ることはなかった。

疲れて宿のレストランでビールを一杯。
さっそくどこからかガイドがやって来た。
この町にやって来る人の多くは、ムルシ族の村を訪問するためだ。
1人の私に勧めてくるのはバイクで行くプラン。
ムルシ族出身のフレウという男は、
1,900ETBでムルシ族の村まで行ってくれると言った。
内訳はこうだ。
国立公園入場料200ETB、ムルシ族入村料200ETB、
セキュリティー代100ETB、駐車代400ETB、バイク代1,000ETB。
それを1,400ETBにしてくれると言う。
彼がいなくなった後すぐに現れたミナヨという男は
同じツアーを1,200ETBまで下げてくれると言った。

とりあえず、せっかくマーケットの日に合わせて来たのだから、
マーケットに行ってみようと出かけた。
宿を出ると、また別の男にツアーの勧誘を受けた。
イボという男は、身なりはかなり汚いが陽気な男だった。
どうやらこの男はバイクや車を持っていないらしく、
公共の交通手段を使ってガイドをしようとしているらしい。
バイク代の代わりに往復110ETBのミニバス代2人分と、
謝礼を払えばいいとのこと。
バイクで行くよりかなり安い。
……がどうもこの男に頼むのも不安。
話しだけ聞くと、バジェットに乗ってマーケットに向かった(6ETB)。

コンソ火曜マーケット

コンソ火曜マーケット

ジンカの町では、火曜日と土曜日に周辺のアリ族が
集まってマーケットが開かれる。
以前は、そこにムルシ族もいたそうなのだが、2年前に民族紛争が起きたらしく
現在はほとんどアリ族の人しかいない。

コンソ火曜マーケットの男の子

コンソ火曜マーケットの男の子

規模はコンソのマーケットほど大きくはなかった。
ここにも外国人観光客はおらず、ものすごく目立ってしまった。
マーケット中で、「You!You!」と呼びかけられる。
南部に入ってからこういう風に呼びかけられることが多い。
目立ちすぎるのが心地悪くなって、マーケットを一周すると中心に戻った。

夕暮れ時、まだもう少し歩いてみようと、町の中心の方に向かって歩いた。
すると、子どもに声を掛けられた。
驚くほど英語がペラペラな子どもは、ガイドの勧誘をしてきた。
イボと同じように、公共の交通を使ってムルシ族の村まで案内すると言う。

コンソのCDショップの前で踊っていた男

コンソのCDショップの前で踊っていた男

子どもたちに教えてもらいながら、町の中心にあるマーケットに向かった。
ここにも人はたくさんいた。
今日は、何か特別な行事がある日だそうで、
子どもたちはぼくたちの家にハニーワインを飲みにおいでよと誘ってくれた。
その日は確かにずっとどこからか音楽がなっていた。

コンソの市場

コンソの市場。こちらは常設の市場

コンソの

コンソの市場。こちらは常設の市場

宿に戻ると、明日のムルシ族のツアーのブッキングをしてしまおうと、
レセプションのおじさんに電話をかけてもらった。
私はバイクで行くことに決めていた。
1番安い料金を提示してくれていたミナヨにかけてもらったのだが、
ミナヨは電話に出ず、代わりにフレウがやって来た。
フレウは料金が高いから嫌だと言うと、だったら信頼のおける友人を紹介する。
その友人なら1,300ETBで行ってくれるからと言うので、
もう時間も遅かったし、それで手を打つことにした。
手付金に100ETB支払った。

宿のレストランで晩ごはんを済ませると、もう真っ暗で。
停電中だったので、何かすることもできず、その日は早く寝ることにした。
部屋は敷地内の奥まったところにあり、
周りみんな男の人が泊まっているようだったので、夜は少し不安になった。
トイレは敷地内のだいぶ遠いところにある。
が、しばらくすると隣に英語を話す男の子がやって来たのが聞こえた。
その男の子は、私の部屋を訪ねてくれた。
ドアを開けると、ダナキルのツアーで一緒だった台湾人の男の子だった。
彼は、南スーダンとの国境に近いキビシという町を
訪ねたときの写真を見せてくれた。
いろいろ話すと不安は消えた。

朝、ホテルのレストランで諸々準備。
昨日、台湾人の男の子にアドバイスしてもらった通り、
スカーフとサングラスを用意。
スカーフは、アジスアベバでもらったエチオピアのスカーフ。
これが民族の人たちにとても人気があって危うく奪われそうになる。
サングラスは、粉塵が多い道をバイクで行くのでこれまたすごく役に立った。

9時すぎにレセプションの前で、フレウに会った。
今日ガイドをしてくれるのは、カヨだと紹介してもらう。
さっそく、バイクに乗ると出発した。

フレウとカヨと記念撮影

フレウとカヨと記念撮影

まずは仲間のきれいなバイクに交換してもらいに行く。
それからガソリンスタンドに寄って給油。
そして、いざ出発。
ジンカの町を抜け、田舎道へと進む。
しばらく行ったところで、小さな小屋に立ち寄った。
カヨの朝ご飯ご飯タイムだ。
お茶を飲みながら彼が朝食を終えるのを待った。
それからがいよいよスタート。

カヨの朝食タイム

カヨの朝食タイム

凸凹した未舗装路。
砂を舞い上げながら進む。
道路脇の草花は土埃が分厚く被っている。
1番やっかりだったのは、トラック。
ものすごい砂埃で道を煙らせた。
顔が汚れていくのがわかった。
すばらくすると、オモ・バレーの広大な自然が見えてくる。
ここは国立公園に指定されている。
太陽の日差しは強かったが、標高が高いので涼しく、とても気持ちいい。
アフリカの大地を感じるツーリング。

道路脇の草花は土を被っている

道路脇の草花は土を被っている

砂埃を舞い上げて走るトラック

砂埃を舞い上げて走るトラック

アジスアベバで会ったオモ・バレー出身の男の人が、初めてアジスアベバに
着いたとき、あまりの車の多さに驚いたと言っていたのを思い出す。
彼が驚くのも理解できた。
時々、バイクを停めてもらって景色を楽しんだ。

オモ・バレーの景色

オモ・バレーの景色

カヨはなかなかいいドライバー

カヨはなかなかいいドライバー

山を下りて行くと、少し暖かくなった。
しばらくすると、「オモ国立公園」の看板を越えた。
その後、人の集まる掘建て小屋があり、そこで停車。
ライフルを持った男と、全身に白いペイントを施したムルシ族の男の子が
近寄って来た。
カヨはそこで入場料を支払っていた。

しばらく走ると、右手に壊れてそのまま放置されているランクルがあった。
その奥の草むらから、ムルシ族の男が近づいてきた。
彼は頭を縞模様に刈っていて、ボロボロのTシャツに布を巻いていた。
カヨは、その男としばらく話した。

そこからの道は時々、ムルシ族に出くわした。
しばらくすると、ムルシ族の集落に到着した。
村の入り口には、体中白いペイントを施した上半身裸の女性が立っていた。
噂通り、「フォト! フォト!」の嵐。

村の中心に行くと、下唇に穴をあけ、皿のようなものを入れている女性がいた。
ムルシ族は、思春期から結婚へ向かう時に、
唇に「デヴィニヤ」と呼ばれる土器で作った皿をはめ込む。
その昔、美しい女性が先に奴隷として連れて行かれることに対抗し、
どうにか女性を醜く見せようと工夫したのがこのお皿。
村の女性を守るために始まったものなのだ。
それが今でも風習として残り、
このような女性がムルシ族の特徴となっている。

ムルシ族はムルシ族としか結婚しない。
ムルシ族は、ムルシ族としての純粋性を重んじるところがある。
周辺の民族から、ちょっと難解な民族だと認識されているのは
そのせいでもある。
ムルシ族の価値観では大きな皿をつけているほど美しい女性とされ、
結婚する時の結納に交わされる牛の数も多くなるそう。

ムルシ族の女性

ムルシ族の女性。下唇に皿を入れている

ムルシ族の男性

ムルシ族の男性

たまにやって来る観光客は、彼らにとって貴重な収入源だ。
彼らは土産として適した特産物を持っておらず、
唇に付ける皿や頭に付ける大げさな飾りくらいしか売るものがない。
なので、その奇抜な姿を写真に撮らせて
チップをもらうことが彼らの主な収入源となる。
大人5ETB、赤ちゃん3ETB。(1ETB=約6円)
だからみんな「フォト! フォト!」と写真を撮れとせがむのだ。
だからこっちとしても、ちょっとでもお金を使ってあげようと、
土産物を買う感覚で写真を撮った。
観光客なら、どうしても奇抜な人ほど写真に撮りたくなる。
彼らもそれを心得ていて、飾りをつけてやって来た。
普段唇の皿を付けていない人も皿を装着する。

ムルシ族の男女

ムルシ族の男女。いろんな格好の人がいる

ムルシ族のおばあちゃん

ムルシ族のおばあちゃん。皿はもう唇に入らないらしい

ムルシ族の未婚女性

ムルシ族の未婚女性。写真を撮ってもらおうと飾りをつけている

写真を撮った後は、彼らが住む藁の家々を見学させてもらった。
村長さんの家からは、オモ・バレーがとてもきれいに見えた。

ムルシ族の家

ムルシ族の家

ムルシ族の家

ムルシ族の家

そんなこんなで20分ほど滞在し、そこを後にした。
これで終わりなんだと思うとちょっとあっけなかった。
できればコーヒーの1杯くらいムルシ族の人々と一緒に飲んでみたかった。

ムルシ族の未婚女性

ムルシ族の未婚女性

ムルシ族と記念撮影

ムルシ族と記念撮影

帰り道、バイクの後ろでムルシ族の女性の顔が浮かんだ。
ムルシ族の歴史を思い、遺伝子レベルで人間の根源とは何なのかを
感じさせられた気がした。
子孫を残し、種を絶やさないこと。
なんだか心にぐっときた。

帰りは行きと違う道で帰ったみたいだった。
膝の丈ほど水没した道を通った。
何にもない場所だと思っていたジンカも、
オモ・バレーから戻ると都会を感じた。

バスターミナルの奥に、ムルシ族のツアーを扱う男が集まる小屋があって、
最後はそこに戻った。
フレウがいて、カヨと3人でコーヒーを飲んだ。
そこから歩いて、宿に戻った。

すぐにシャワーを浴びた。
牛のいる庭の横に立つ掘建て小屋にあるシャワールーム。
シャワーヘッドから出て来るのは冷たい水。
身体を流れる水は茶色く濁った。

それから部屋でゆっくりしていると、日本人が2人訪ねてきた。
エリコちゃんとシュウマくん。
2人はここに来たばかりと言うので、
ムルシ族のツアーについて知っている限りを教えてあげた。
それから、レストランに行くと、冷たいビールを飲んだ。

しばらくすると、また2人がやって来て、いろいろとしゃべる。
久しぶりに会った日本人にちょっとリラックスもできたのか、
ビールを5本も飲んでしまった。
なぜかその日はたくさんの外国人旅行者がいた。

その夜も停電だったので早く寝たけど、
飲み過ぎたのか夜中に目が覚めた。
部屋を出てみると、庭いっぱいに蛍がいて、時々ふわふわと空中を飛んだ。
空を見上げると満点の星空だった。
アフリカにこんな場所があるなんて思っていなかった。

翌朝、ホテルで朝食をとった後、
カイアファールに向かうバスに乗り込んだ。
新たな民族に出会うため、木曜のマーケットに向けて出発だ。

ジンカの宿:Goh Hotel

【住所】South Omo Zone, Jinka 62
【料金】115ETB(ツイン)
【設備】コンセントあり(停電する)
【評価】★★★☆☆

移動:コンソ→ジンカ

ミニバスで4時間。150km。100ETB。
コンソ→ジンカ

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