地元の人の2倍の運賃と荷物代を支払って、ミニバスに乗った。
運転手を含め24人が乗り込んだぎゅうぎゅう詰めの車内。
素朴に暮らすエチオピア南部の人たちにとって、
たまにやって来る裕福な外国人は、
お金を恵んでもらえる存在であると捉えている人も少なくない。
貧困国では、現地の人より少し多く支払ってもいいと考えている私は、
交通費を多く支払うことに問題はなかったのだけど、
身につけているものをくれと言われるのはめんどくさかった。
ジンカからカイアファールまでは1時間ほど。
マーケットの前で降ろされた。
近くにいた男の子に案内してもらって、お目当ての宿に向かった。
「Sami Hotel」。
200ETBだと思って行ったら250ETBで予算オーバーだったけど、
部屋がきれいだったのでとりあえずその日ははそこに泊まることにした。
とりあえず、宿の前の店でビールを飲んだ。
ビール代が他のどの町より高かった。
カイアファールは他の町へ繋がる幹線道路沿いに、
少し店や宿泊施設があるくらいで、とても小さな村だ。
この辺りに住む人々はうまく観光客を受け入れているようで、
ちょっとしたツーリスティックな場所となっている。
そのため、外国人向けのものは少し値段設定が高い。
カイアファールでは、木曜日に周辺のバンナ族の村から
人が集まってマーケットが開催される。
今日はマーケットの日。
幹線道路沿いには、これまた奇抜な格好のバンナ族が行き交っていた。
バンナ族の男性は短いスカートを履いていて、頭や腕にビーズの飾りをつけ、
木製の椅子を持ち歩いている。
この木製の椅子、どこでも座ることができるという利点の他、枕にもなる。
女性は、ビーズや貝で装飾されたヤギの皮のスカートを履き、
赤土をつけたツイストヘアーにヘルメットのようなものを被っている。
このヘルメット、市場で買ったものを入れていたり、
後に紹介するバンナ族の村では壷のふたにも使われていた。
宿まで案内してくれた男がやって来て、牛飛びの儀式について案内してくれた。
この町にやって来たのは、木曜日のマーケットに行くためと、
バンナ族の成人の儀式を見るためだ。
一列に並ばせた牛の上を素っ裸で飛ぶという儀式が、
成人の儀式の中のひとつのプログラムになっている。
カイアファールの南西にあるトゥルミやここカイアファールを起点に
ツアーを組んで行くことができる。
とはいってもちゃんとしたツアー会社があるわけではなさそうで、
おそらく、バイクや車を扱う大元の店か何かがあって、
そこで働く若いガイドたちが個別に客をみつけ交渉するというのが基本のよう。
ガイドたちは、客をみつけると交渉し、バイクなり車なりを借りて、
仲間を呼び、ツアーを組むのだ。
私はジンカで会ったエリコちゃんとシューマ君と一緒に、この成人の儀式を
見に行こうと約束していたので3人で行けるツアーについて聞いた。
とはいえ、2人と話し合わないとブッキングすることはできない。
話しを聞いた後は、幹線道路を挟んで向かいにあるホテルを見に行った。
よくよく考えると、エチオピア・ブルがなくなりそうだったから、少しでも節約
と思い、今のホテルよりは安いはずの「NASA Pension」に行ってみた。
150ETBで部屋も悪くなかったので明日はこっちに引っ越してこようと思った。
それからマーケットに向かう。
マーケットのある広場の周辺にはバンナ族がたくさんいた。
衣類や雑貨、食品、壷、土産用の木彫りの置物など。
バンナ族の若者が付けているパッチン止めやビーズや貝殻などが
売られているのは、カイアファールらしい光景だ。
このマーケットには外国人ツーリストが数人、観光に来ていて、
バンナ族は誰もそんなことには気を止めていなかった。
他の町に比べて、とても居心地がよかった。
写真を撮ることもそれほど難しくはなかった。
コーヒー屋さんに入ると、バンナ族の人々に混ざってコーヒーを飲んだ。
これがなかなか美味しい。
ここのマーケット、規模はそれほど大きくないためすぐに見尽してしまう。
しばらくマーケット内をウロつくと疲れて宿に戻った。
部屋で休んでいると、エリコちゃんとシューマ君がジンカからやって来て、
訪ねてきてくれた。
2人に向かいの宿を教えてあげて、2人がチェックインを済ますと、
成人の儀式について話し合った。
そこへやって来たのが、ブーザ。
彼はメケレの大学に通う20歳の青年だ。
明日、カイアファールから近い村で成人の儀式が行われるそうだ。
バイク3台を手配してくれ、それを1,300ETBにディスカウントしてくれる
と言うので彼にお願いすることにした。
バイクの燃料費のみ先に支払った。
それが決まると、3人でマーケットに行った。
またもう1人、日本人に会った。ケンジさんという男性。
4人でマーケットを散策。
エリコちゃんは、トゥマイ族の椅子を購入。
シューマ君は、スルマ族の木彫りの飾りを買った。
4人でまた、コーヒー屋さんに行ってコーヒーを飲んだ。
カイアファールには、家畜の売買が行われるマーケットが他にもあるらしく、
それに行ってみようかとも思ったけど、
今日はもう終わっているとのことで諦めた。
宿に戻る途中、もう1人の日本人に出くわした。
ウガンダのJICAで勤める通称コイカさん。
休暇中の旅らしいが、JICAの人は行ってはいけない場所があるらしく、
それにカイアファールが入っているそうで。
バレたらヤバいから本名は秘密とのことで、会話の中で出て来たJAICAの韓国版
KOICAにちなんでコイカさんと呼ぶことになった。
日本人5人でビールを飲み、いろいろしゃべった。
コイカさんはエチオピア南部の旅は2度目だそう。
この町より南のディメカに前回行ったなんて話しをしていた。
暗くなるとキャンドルを点けてもらった。
キャンドルの中に虫が入って、もがいている様子を見ながら話す。
だんだん鑞にまみれていく虫。地獄のような光景だった。
結局、2時間くらい経ってから助け出したのだけど。
晩ごはんもそのままそこで食べた。
町で唯一自家発電をしているバーにも飲みに行った。
中庭にある藁でできた東屋で、バンナ族の家族の隣に座りビールを飲んだ。
しばらくすると彼らは、床にそままま寝転がり、ブランケットを被ると、
木の椅子を枕にして寝てしまった。
宿に戻る途中、空を見上げると満点の星空だった。
これまで見た星空の中でも5位以内には入る満点っぷり。
翌朝8時、向かいのホテルに移ると、エリコちゃんと町を歩いてみることにした。
少し歩いたところに、小さな店があったので
そこで朝のコーヒータイムを楽しんだ。
ジンカへと続く道への交差点まで歩く。
ブーザに出くわした。
ブーザが町を案内してくれ、歩いた。
幹線道路を外れると他は未舗装道路。少し離れると自然が溢れていた。
すぐにカイアファールの町から外れたようだった。
通りでは子どもたちが朝から元気に走り回り、
家々では生活の臭いが漂っていた。
そこにある家の屋根にはポットが被さっていた。
幹線道路に出ると、発電所が見えた。
この発電所で南部一帯を賄うそうだ。さっさと機能してほしいものだ。
朝ごはんを食べるのにいい店はないかとブーザに聞くと、
一軒の店を紹介してくれた。
それは昨日の夜に行ったバーだった。
そこで朝ごはんを食べているとき、ブーザがこんなことを話した。
「今、カイアファールにはもう1人○○という日本人がいるんだ。
彼は去年もここに来て、今日はディメカに行くんだよ。
ディメカには彼のガールフレンドがいて、いつか結婚するんだ。
それには20頭の牛が必要だから、日本に帰って2年働くんだってさ」。
私とエリコちゃんは顔を合わせた。
コイカさんのことだ!
牛20頭は、50,000ETB(1ETB=約6円)らしい。
コイカさんはもう少しでJICAの任期が終わると言っていた。
JICAの隊員は、退会するときに200万円が支給されるそうな。
のんびり働きながら貯金したら2年くらいはかかるのかな、
なんてエリコちゃんと笑った。
それから宿に戻った。
午後には、いよいよ成人の儀式だ。
【住所】わからない。幹線道路沿い。
【料金】250ETB(シングル、トイレ・シャワー付)
【設備】なし
【評価】★★★☆☆
【住所】わからない。Sami Pensionの向かい。
【料金】150ETB(シングル、トイレ・シャワー付)
【設備】なし
【評価】★★★☆☆
ミニバスで1時間。50km。50ETB。