夜中の3時にエル・カラファテを出たバスは、
朝の7時にはリオ・ガジェゴスのバスターミナルに着いた。
冬が迫るパタゴニアの早朝は、ものすごく寒い。
エル・カラファテからウシュアイア行きのバスは2社あって、
早い方のバスを選んだのに、遅いはずの方のバスに抜かれ、
予定時刻よりだいぶ過ぎた9時すぎにリオ・ガジェゴスを出た。
昨日の夜はほとんど眠れなかったので、バスの中では熟睡した。
10時頃、アルゼンチン側のイミグレーションに到着した。
重い身体を起こして、出国手続きをする。
またバスに乗り込むと、少し先にあるチリ側のイミグレーションへ。
アルゼンチン側と違って、少しめんどくさい。
入国手続きを済ませると、バッグをX線に通す。麻薬犬がバスを点検した。
またバスに乗ってしばらくすると、マゼラン海峡に到着する。
そこで、フエゴ島に渡るためフェリーに乗船した。
甲板に出て、フエゴ島に渡る一部始終を見守った。
その先は、この旅のゴールの地、ウシュアイア。
バスがフェリーから降りるのを待って、出発。
フエゴ島は、西半分をチリ、東半分をアルゼンチンが領有している。
しばらく走ると、アルゼンチン側に入るため、
また国境を越える。
チリ側のイミグレーションを通過し、
アルゼンチン側のイミグレーションも通貨する。
リオ・グランデの街に到着したのは、19時頃。
陽が沈むのが遅いパタゴニア地方では、その時間でもまだ明るかった。
そこでまた、バスの乗り換えをする。
同じくウシュアイアに向かうイギリス人の男の人が、
どうやら荷物がなくなったらしかった。
彼は、バスの中で英語とスペイン語を話せる人をみつけだすと、
通訳を介してバスの運転手と話あった。
どうやら自分のバッグを、
女性がどこかに持って行ってしまうのを見ていたらしい。
結局その女性が、バッグを間違ったことに気付き、
バスターミナルに戻って来てくれたので、無事に出発。
ウシュアイアに到着したのは、22時すぎだった。
予定時間を3時間近く過ぎていた。
バスに到着すると、宿の客引きがいた。
ウシュアアイアの宿はどこも高いと聞いていたが、その宿はお手頃な
値段だったので、同じバスの外国人同士でその宿に向かった。
バッグをなくしかけたイギリス人、クリストファーとは同じ部屋になった。
翌朝、朝食の後、クミちゃんと一緒に出かけた。
どんよりとした空、強風が吹く。
これは、ウシュアイアらしい天気なのかもしれない。
まずは、インフォメーション・オフィスに向った。
海側、桟橋に近い方のインフォメーション・オフィスに行く。
お目当ては、世界最南端到達証明書をもらうためだ。
ユーラシア大陸を横断したときも、ポルトガルのロカ岬で
世界最西端到着証明書をもらった。
これは私にとって思い入れのあるものだ。
しかも、ここではなんと無料でそれがもらえる。
それに加えて、パスポートにスタンプも押してもらった。
そのまま最南端到達証明書を持って、港の側で記念撮影をした。
これも、また10年前にロカ岬でしたことと同じ。
それから2人でサン・マルティン通りを歩き、
世界最南端の街から日本の友達に送るためのポストカードを買った。
昼食をとった後は、緊張のひととき。
南極行きのフェリーが出ているツアー会社を探す。
4大陸目の旅への切符を求めて歩きだした。
しかし、何軒か回るが、シーズンは終わったと言われてしまった。
実は、インフォメーションでも南極行きツアーについては聞いていた。
シーズンは終わっているとのこと。
最後に聞いた店で、あの店ならいろいろとわかるかもしれないと教えてもらい、
少しの望みを賭け、サン・マルティン通りの西側にあるその店に向かった。
しかし、やはり今季最後のフェリーは、先週すでに出てしまったとのこと。
来季のフェリーもすでに予約が入っているらしい。
今年は、4,000US$が最安だったけど、年々高くなっている。
ラスト・ミニッツ(キャンセル待ち)を狙うなら、
最低10日前にはウシュアイアに来ていること、とのことだ。
今度、本当に南極に行こうと決めたら、早く行動を起こさなくてはいけない。
しかし、せっかくここまで来て行けなかったというのは、かなりのショックだ。
タバコをふかしながら、心の整理をする。
南極行けなかった代わりに、ビーグル水道にペンギンでも見に行こうかと
ツアー会社に行ってみたりした。
立ち直って来ると、そうだ、ヤマナ族博物館に行ってみようと思った。
私がヤマナ族について知ったのは、ブエノス・アイレスの宿。
同じ宿に泊まっていたツヨシ君が、
ウシュアイアに行くならこの部族の博物館に行ってみたらどうですか、
と「ヤマナ」というワードで画像検索したものを見せてくれた。
それは、それは奇妙な格好の部族の写真だった。
なんでも、フエゴ島独特の民族であるヤマナ族は、
この寒々しい地で裸で暮らしていたそう。
それが、ヨーロッパからやって来た入植者に服を着ることを教えられる。
しかし、服を着ることを教えてもらったものの、
服を洗うことを教えられていなかった彼らは、
汚れた服を着続けたことによって、
衛生状態が悪化し、疫病が流行した際に絶滅してしまったそうだ。
なんとも間抜けな話だ。
ツヨシ君から見せてもらった奇妙な写真は、
ヤマナ族が成人の際にする格好らしい。
街の東にあるヤマナ族博物館に行った(7,500$)。
展示ルームは3室で、ほとんどがスペイン語のパネル。
それでも写真が付いているのでおもしろい。
毛皮を纏っている姿は、肩とか出てしまっている。
服とは言えないけど、実に惜しいところまではたどり着いていたんだ。
ヤマナ族が服を着なかったのは、
裸で火にあたった方が暖かいかららしい。
アザラシの油を身体に塗り込んで、防寒していたとか。
興味深いのは、映像が残っていること。
彼らを発見した人たちは、さぞ驚いたろうなと思った。
博物館を出た後は、ヤマナ族のTシャツを探した。
チリのバルパライソで買ったという、
ヤマナ族Tシャツを見せてもらったことがある。
本場の地ならもっと豊富にグッズがあるのかなと思ったら、
そうでもないらしく結局みつからなかった。
そのまま、スーパーで買い出しをして、帰った。
その日の夜は、アルゼンチンビーフのひき肉を存分に使った
ボロネーゼを作った。
翌日は、日曜日で空いている店もないし、南極に行きそびれたので、
今後の予定を立てようと、1日休むことにした。
日本に帰るには、チリのサンチアゴから帰るのが安いらしい
ということがわかったので、日本までのチケットも買った。
そして、あと少しサンチアゴまでの旅の予定を立てた。
その夜、ファビアナというウルグアイ人女性に、エスメラルダ湖に誘われた。
私は明日、チケットの手配をしたりといろいろ忙しいので断ったが、
すでにチケットを買ったクミちゃんと、
クリストファーは行くことにしたみたいだった。
その翌日には、チリのプンタ・アレーナスに向かう
バスのチケットを買いに行き、ウシュアイアの街を散歩した。
夜は、あと少ししか味わうことのできないアルゼンチンワインを堪能した。
クリストファーが宿から安くティエラ・デル・フエゴ国立公園に行ける
バスがあると紹介してくれた。
しかし、私たちは園内にある世界の果て号という世界最南端を走る
蒸気機関車にも乗りたいので、列車の駅に行ってもらえるかわからない
そのバスに乗るのはやめておくことにした。
その翌朝8時すぎには宿を出た。
その日、ウシュアイアに来て、初めて晴れた。
鮮やかな色の街は、素敵に見えた。
バスターミナルまで行くと、ツアーの客引きがたくさんいる。
ツアー会社はなく、その客引きと直接交渉する。
世界の果て号に乗ることと、世界最南端の郵便局に行くこと、
両方できるルートを客引きの男と交渉した(200ペソ)。
帰りはトレッキングしなくてはいけなくなりそうだが、まあそれもいい。
バスは、9時発。
やって来たのは、クリストファーとファビアナを乗せたバス。
「ほら! だから言ったでしょ。このバス、列車の駅にも行ってもらえるって」。
クリストファーの言う通りだ。
バスはウシュアイアの街の北側を通り、
ウシュアイアの南東にあるティエラ・デル・フエゴ国立公園に向かった。
入り口で国立公園の入場券を買う(140$)。
そのまましばらく走ると、列車の駅だ。
危うく通り過ぎそうになったので、運転手に言って寄ってもらった。
しかし、運転手が言うには、列車は運行していないとのこと。
そんな話は観光案内所では聞いていなかった。
とにかくやってないのでは仕方ない。
次の停留所である、世界最南端の郵便局に行くことになった。
バスを降りると、目の前にはラパタイヤ湾が広がっている。
奥の方に見える山はチリ側の領有地だ。
湾の桟橋にある小さな掘っ立て小屋が、世界最南端の郵便局。
中に入ると、先がくるりとうねったヒゲのおじいさんが1人で局員を勤めていた。
そこでは、パスポートにスタンプを押してもらえる他、
おじいさん局員の写真入りシールを貼ってもらえる(20$)。
(日本までの切手はウシュアイアで買うのと同じ30$)。
そこで日本の友達にポストカードを投函すると、
トレッキングルートを歩き始めた。
ラパタイヤ湾沿いの平坦な道を歩く。
景色がいい。
パタゴニアでしかほとんど見られないという、
アシカそっくりのオタリアが泳いでいるのを目撃した。
最終目的地の違うクリストファーとファビアナとは途中で別れた。
海沿いを歩いたり、内陸部を歩いたり。
道に迷いそうになっても黄色い目印があるので大丈夫。
馬に出くわしたり、紫のキノコをみつけたり、
いろいろと楽しめる要素はいっぱいだ。
途中、作ってきたサンドイッチを食べた。
山の中で食べるのは、格別。
ほとんどが平坦な道だったけど、何度か急な上り坂もあって、
ぬかるんだ地面に滑りそうになりながら登った。
8kmのトレッキングルートの先は、道が二手に別れている。
クリストファーとファビアナは、
トレッキングルートが続く方に行っているはず。
私たちは反対側のカフェテリアに向かった。
昼を過ぎてお腹が空いていたので、
きれいな景色の見えるカフェテリアでランチにした。
15時すぎのバスでウシュアイアの街に戻ると、
免税店でタバコを1カートン買った(170$)。
宿に戻ると、荷物をまとめる。
ゴールはしたものの、後少し、家に着くまでは気を抜いてはいけない。
簡単に晩ごはんを食べると、明日に備えて早めに寝ることにした。
【住所】Av. Alem 152, Ushuaia, Argentina
【料金】150$(6人ドミトリー)
【設備】Wi-fi、キッチン、朝ごはん
【評価】★★★★★
バス(TAU Tecni Austral社)で20時間。980$。
1. エル・カラファテ→リオ・ガジェゴス。バスで4時間。
2. リオ・ガジェゴス→リオ・グランデ。バス(途中バスごとフェリー乗船)で9時間半。
3. リオ・グランデ→ウシュアイア。バスで3時間。