キエラの国境は、タンザニアからマラウイに続く幹線道路があり、
その周りを小さな商店が囲んでいる。
国境の町らしい町だ。
バスターミナルから歩いて20分ほどで、
タンザニア側イミグレーションにたどり着く。
出国カードを書いて出国スタンプをもらい、
次はマラウイ側イミグレーションに向う。
その手前、両替所で手持ちのドルをマラウイ・クワチャに替えた。
マラウイの為替は、闇レートが存在する。
通過の不安定さから、ドル現金の価値が重んじられ、
両替所でドル現金を替える場合、公式レートよりいい闇レートで両替できる。
ATMで引き出す場合は公式レートが適用されるので、
ドル現金を両替した方が得なのだ。
世界には、そんな闇レートが存在する国が稀にある。
イミグレーションに行くと入国カードを書いて、入国スタンプをもらった。
時計をマラウイの時刻に合わせる。
そのまま輸出入を行うトラックが並ぶ幹線道路を歩き、
ミニバス乗り場を探した。
近くにいた現地の人にどこに乗り場があるのか尋ねると、
そこにやって来たミニバスを停めてくれた。
ムズズまで直通で行くらしい。
しかし、ミニバスにはキエラ国境行きと書いてある。
それに乗り込むと、イミグレーションに向かって左手にある町
ソングウェへとたどり着いた。
町じゃない方へ歩いていたらしい。
つまりはここから出発するのだ。
一からの客集め。
しばらく待たされ、ミニバスがいっぱいになると、出発した。
12時前のこと。
緑の多いのどかなマラウイの自然。
レンガ造りの家では、素朴な生活が垣間見えた。
手を振ると、手を振り返してくれる。
1時間半ほど走ると、カロンガの町に入った。
それからしばらく走ったところで、
満員になったムズズ行きのミニバスに乗り換えさせられた。
ワゴン車の中に運転手を含めて24人、子ども3人、鶏1羽が乗り込む
ぎゅうぎゅう詰めの車内。
密集した車内は暑かった。
しばらくすると、マラウイ湖が見えてくる。
青くきれいな湖。
取れた魚を干物にしているのが見えた。
それは近隣国へと輸出もされているらしい。
マラウイ湖国立公園は、世界遺産にも登録されている。
湖畔には、バオバブの木もたくさん生えていた。
チランバ・ベイ(Chilamba bay)が見え、
チウェタ(Chiweta)という町から山に入った。
隣の席の男の人は、ムズズ大学に通う学生さん。
景色を見ながら、いろいろと教えてくれる。
この山には猿がいるよ、と言うので外を見ていたら猿を何匹も見かけた。
黄色い毛で鼻の長い面白い顔の猿だった。
見たことない猿に興奮しながら写真を撮っていると、
運転手はそこだけゆっくりと走ってくれた。
そういうところに、「Warm heat of Africa」と評される
マラウイの人たちの心の暖かさを感じる。
背もたれが低いので眠れず、西陽が一層厳しくなると、
私たち3人はみんな西側の席に座っていたため、直射日光をもろに浴び、
ものすごく体力を消耗した。
16時半頃、ムズズに入った。
ムズズは、マラウイ第3の都市だが、高い建物もないしのんびりとした町だった。
バスターミナルに到着すると、急いで売店に行った。
冷たいコーラを飲んで一息。
もう乗り物には乗りたくない気分だったけど、
それでも、ンカタベイ行きのミニバスを探して乗り込んだ。
太陽が沈むと、標高が高いのでかなり涼しくなる。
ンカタベイの町に到着したのは、18時頃。
がんばって、朝早くに出た甲斐があり、ほぼ予定通りに来れた。
タクミ君はバスを降りてそんなに遠くない場所にある安宿に向かい、
私たちは送迎のタクシーで丘の上の宿に向かった。
丘の上に着くと、部屋のある湖畔に階段を下っていく。
夜はレストランのカウンターがレセプションにもなっている。
今はローシーズンだからと、ドミトリーの料金で
4人部屋を2人で使わせてもらうことになった。
チェックインを済ませると、併設のレストランで晩ごはんにした。
湖がすぐ近くにあるテーブル席。
今は暗くて景色は見えないけど、明日にはきれいに見えるはず。
注文したパスタは、エチオピアのオリジナルイタリアンなんかではなく、
ちゃんとしたパスタだった。
オリーブなんて久しぶりに食べた。
トイレはコンポスト・トイレだった。
タンクや水はなく、用を足した後はおが屑と灰を入れ臭いを消し、
自然に戻すというもの。
シャワーを浴びると、波の音を聞きながら、眠りに就いた。
翌朝目が覚めると、手を伸ばしてカーテンを少し開けた。
光を浴びた湖が見えた。
のんびり起きると、1日2回しか繋がらないWi-Fiを使いにレストランに行った。
サーモンピンクのブーゲンビレアに湖のブルー。
実のなる木には、サバンナモンキーが集まっていた。
フレンチトーストにシナモンシュガーをたっぷりかけて食べる。
それから着ていたものを全部洗濯した。
洗面スペースで洗濯をしていたら、トカゲが隙間からちょろっと顔を出し、
私をみつけると、逃げて行った。
それから、町に出かけた。
次の移動のバスチケットだけは、買っておこうと思ったのだ。
宿から町までは、少し遠い。
けれどその分、町から見える湖より宿から見える湖の方がきれいだ。
マラウイの人たちは、本当に温和な人が多い。
子どもたちもピュアでかわいい。
のどかな道のりを歩き、町に出ると、
地元の人がたくさん入っていたレストランで昼食にした。
ンシマとビーフシチュー。
ンシマは、トウモロコシの粉をのり状にした食べ物で、
マラウイ人の主食だ。
もちろんローカルレストランの方が断然安い。
そらから、バスターミナルの方へ歩いて行った。
とあるオフィスで、首都リロングウェに行くバスチケットについて尋ねた。
すると、直通バスはないとのこと。
リロングウェに行くには2通り。
ひとつは、ムズズに戻って、リロングウェ直通バスに乗る方法。
もうひとつは、目の前の幹線道路の先にある北と南に分かれるところ、
そこにあるポリスチェックの場所から
リロングウェに行くバスを停めて乗る方法。
ポリスチェックの場所まで行く、乗り合いタクシーのことも教えてもらった。
そのまま、メインロードをウロウロとする。
道の脇には青空マーケットがある。
魚の干物を売る店が多かった。
ンカタベイは、マラウイ湖における主要な港のひとつだ。
市場をウロつき、最近ハマっているピーナッツを買ってみるが、
炒ってない生のピーナッツで美味しくなかった。
トマトとリンゴと、ゆで卵も買った。
スーパーマーケットでビールを買って、海の側で飲んだ。
浜は、生活感のある雑多な雰囲気でくつろげる場所ではなかった。
人をたくさん載せたボートがいて、
しばらくするとどこかに向かって出発した。
野良犬が寄って来た。
両替するのをすっかり忘れて、宿に戻ってしまった。
2回目のWi-Fiの時間だったので、レストランに行った。
宿のスタッフの子どもに混じって、宿泊客の子どもが遊んでいた。
お面を付けて、キックボードを乗り回す。
子どもは仲良くなるのが早くていい。
翌朝、ちょっと早くに目が覚め、洗濯をして、湖岸のベンチに座り、湖を眺めた。
それからレストランに行って、朝からチキンカレーを食べた。
今日はもう宿から出ないと決め、部屋に戻ると、ベッドに横になる。
昼すぎ、水着に着替えて、レストランに行った。
しばらくすると、陽気なキャプテン・ジョンがやって来た。
ボートトリップに出かける人が集まって、
レストランの下に停泊していた木製のボートに乗り込んだ。
もう1人の船員が、ボートのエンジンをかけ出発。
湖側から私たちのロッジが見えた。
ボートは、北に向かって進む。
タンザニア、モザンビークとここマラウイの、3カ国に囲まれたマラウイ湖。
アフリカで3番目に大きな湖だ。
地平線の向こうは、モザンビーク。
ユリちゃんと、モザンビークの隣の国、スワジランドの民族の話なんかをした。
5kmくらい走ったところに、ビーチがあった。
その近くの岩壁の前で停泊。
キャプテン・ジョンが岩壁の上を指差す。
「あそこから飛び降りることができる奴はいるか?」
すると、ボート内の男たちが立ち上がった。
ドイツ人とイスラエル人の青年と、アルゼンチン人のおじさん。
「岩壁の向こうに周れば、登りやすい場所がある。
力のあるやつは、ここから登ってもいいぜ!」
男性群は湖に入ると、岩壁の奥に周った。
その隙に、キャプテン・ジョンは目の前の岩壁を登って先回り。
岩壁の上から1番に飛びこんだのは、イスラエル人の青年だった。
続いてドイツ人の青年、アルゼンチン人のおじさんも飛び込んだ。
キャプテン・ジョンは、さらにその先の木に登り、頭から飛び込んだ。
浜辺のガキ大将がそのまま大人になったみたいな人だった。
その後、ビーチに降りた。
波に酔ってしまって、漁船の影で休んだ。
近くに住む子どもたちが遊び回っているのを眺める。
子どもたちは、本当に無邪気だった。
外国人にスレていないどころか、肌の色の違いすら
気にしていない様子で私の周りにもやって来た。
気が付いたら、ユリちゃんが遠くの海岸に泳いで行ってしまっていた。
しばらくして、帰ってきたユリちゃんに話しを聞くと、
海岸の奥から村人がやって来たそう。
女の子2人組が皿洗いをしだしたのでそれを手伝い、
その後少し一緒に泳いだらしい。
その写真を見せてもらうと、女の子たちは上半身裸だった。
それから、キャプテン・ジョンが浜辺の子どもたちと、
ボートツアーの参加者を集めてゲームを始めた。
三段跳びで誰が1番飛べるかというもの。
拾ってきた枝を3本並べて、みんなでゲームスタート。
最後は、ドイツ人の青年と地元の少年で勝負。
身体能力がめちゃくちゃ高い地元の少年の優勝。
海岸に張られていた魚獲り用の網を、浜辺にいたみんなで引き揚げた。
魚が大漁にかかっていた。
昨日、青空市場で見た干物と同じ種類の魚だった。
ちなみに、ンカタベイの主要産業は漁業と観光である。
夕暮れまでのんびりと過ごすと、ボートで引き返した。
途中、ボートを停めると、キャプテン・ジョンが
買ってきた魚を枝に刺した。
湖岸の木の上にサンショクウミワシが泊まっているのが見える。
キャプテン・ジョンはボートの端に立つと、
口笛でサンショクウミワシに呼びかけた。
手には魚の串を持ち、ぐるぐると回す。
そして、それを遠くに投げた。
サンショクウミワシは、大きな羽を広げこちらに向かって羽ばたいた。
私たちの乗ったボートを追い越したかと思うと、
急に角度を変え、魚を目掛けて一直線に急降下した。
真下から眺めたその光景は、ものすごく迫力があった。
夕陽が遠くの山の奥に沈んだ。
ロッジに戻ると、シャワーを浴びて、洗濯をした。
そして、レストランで最後の晩餐に魚を食べながら、ビールを飲んだ。
旅の疲れも少しは癒えた気がした。
【住所】chikale beach road, Nkhata Bay
【料金】12$(ドミトリー価格で4人部屋を2人で使わせてもらった。トイレ・シャワー共同)
【設備】Wi-fi、不定期ボートトリップ
【評価】★★★★☆
1. ムベヤ(ナニナーニ・バスターミナル)〜キエラ。バスで3時間。5,000Tsr。
2. ソングウェ〜ムズズ。ミニバスで5時間。3,800Mwk。
3. ムズズ〜ンカタベイ。ミニバスで2時間。1,200Mwk。